筋電位センサは、筋肉の動きに係る皮膚表面の電位の変化を捉えます。この時、得られる波形にはどのような意味が含まれるのでしょうか? 今回は筋電位発生のメカニズムと筋電波形の解析について説明します。
筋肉は多数の運動単位から構成される
一般に筋肉と呼ばれる組織は筋繊維の集合体です。大脳皮質の運動野から投射を受けるαニューロンと呼ばれる末梢の神経細胞のひとつひとつが、複数の筋繊維に投射しています。逆にひとつの筋繊維はひとつのαニューロンの投射のみを受けます。(1:n対応) これをMotor Unit(運動単位)と呼びます。筋肉は、複数の運動単位が集まって構成されます。
基本的に、弱い力を出している時には少ない筋繊維が活動し、強い力を出している時には相対的に多くの筋繊維が活動します。
筋電位センサは筋繊維の活動電位の総和を捉える
筋電位センサは皮膚表面の電位の変化を捉えます。前述のとおり、筋肉は複数の運動単位から構成されますので、捉えられる電位の変化は、皮膚の下にある複数の運動単位から生じる活動電位の総和となります。この時、皮膚表面の電位変化を記録して得られる波形を筋電図と呼びます。
筋電図は力そのものの波形ではないことに注意が必要です。筋電図に記録されるのはあくまでも運動単位の発火頻度および活動電位の振幅の総和となります。
波形の時系列・周波数解析により多彩な情報が分かる
筋電波形を解析することで様々な情報を得ることができます。
相対的な力の強さを得ることは比較的容易です。運動単位が参加すればするほど、活動電位の総和も大きくなりますので、スパイクあたりの振幅値を確認することで運動単位の参加の総量を推定することができます。解析には振幅値の整流と単位時間当たりの積分値などがよく用いられます。
さらに周波数解析は有用な解析手法です。生理学的知見から、筋電波形の周波数分布の平均が、筋肉の疲労の度合により変化することが分かっています。被験者に何かのタスクを行ってもらう際に、正規化された運動をタスクの前後に実施してもらうことで、疲労の変化を捉えることが可能です。